HOME > 作品のできるまで > ぼく

ブロンズ作品のできるまで

作品を作るときは必ずそのイメージを描いて、頭の中に焼き付けてから粘土の制作に入ります。まずデッサンから始めますが、あくまでも人に見せる為ではなく自分の記憶の中に描き込んでいきます。
次に粘土での制作に入りますが、まず芯棒作りから始めます。芯棒は体で言えば骨格にあたる部分なので、とても重要な作業です。
粘土は信楽の土と瀬戸の土をブレンドして自分で使いやすい状態にして使っています。 最初に粘土を荒付けしていき、時間をかけて作品の密度を上げてゆきます。彫刻は立体なのでどこも正面です。いろいろな角度から見た表情を大切にしたいと思っています。とくに目元、口元などの顔の表情が一番苦労します。
粘土の制作が終わり、これから石膏どり、樹脂どりの作業に入ります。粘土のままでは、鋳造(ブロンズ)にする事が出来ないからです。石膏型を二つに分割するために、粘土に真鍮の板を差し込みます。
石膏を塗っていき全体に平均して厚みをつけます。
固まった石膏を二つに分け、中から粘土をかき出します
石膏型に樹脂を塗りこめます。最初はやわらかな樹脂、その後固まってからかたいめの樹脂を塗ります。最後にガラス繊維を張り込んで補強します。
石膏型をあわせ、樹脂が固まってから石膏型を割り出します。
粘土の作品が樹脂に置き変わりました。このまま鋳造(ブロンズ)してもいいのですが、樹脂の段階で手を入れます。粘土では表現しきれなかった所や、石膏取りで出来たバリあとなどを修正しながら密度をつくります。私の作品の顔や腕など肌がつるりとしているのは、粘土で作った肌合いではなく、サンドペーパーで樹脂をこすったり付けたりしてできる肌合いなのです。
ある程度仕上がったら、作品に色を付けます。色付けすることによって、微妙な形や表情がはっきりしてくるからです。また、ブロンズになった時の調子を見るためでもあります。
やっと樹脂原形の完成です。アトリエでの作業はここまでです。これからは、富山県高岡市にある鋳造所での作業になります。
樹脂の原形はシリコンゴムで型取りされ、ロストワックスという技法で、ブロンズにされます。シリコンゴムで成形された型に溶けた蝋を流し込み、蝋が固まってから型からはずされます。
蝋のバリあとや、ピンホールなどの問題点を、熱したコテを使って修正していきます。
完成した蝋の原形に、湯道を取り付けます。これは溶けたブロンズの金属が流れるバイパスになります。湯道の次に湯口を取り付け、ここからブロンズが注ぎ込まれます。
蝋の原形を鋳型になるセラミックの溶液につけ、次にセラミックの粉を全体にまぶします。この工程を8回ほど繰り返し、厚さ1cmの型材が蝋の表面に出来上がります。
鋳型を施された蝋の原形は、次に圧力のかかる窯に入れられます。圧力を加えることにより蝋で出来た部分が溶け、蝋は液体になって回収されます。この作業を脱蝋といいます。脱蝋の終わった型は900度のガス窯で焼成され、蝋を完全に燃やしきってしまいます。
ブロンズと言うのは銅が約80% 錫が約20%の合金の事です。日本では昔から青銅と呼ばれてきました。高周波の炉で約1230度ぐらいに溶かされたブロンズの地金がセラミックの型に注ぎ込まれます。鋳造の工程の中でも、最も緊張する場面です。
一昼夜おき冷えた型から、ブロンズに置き換わった作品を割り出していきます。
グラインダーで湯道や湯口を切り落とし、荒仕上げをします。
金属の加工専門の職人さんと、ブロンズの加工が始まります。象嵌といって、ピンホールを同じブロンズの金属で埋めて修正していきます。職人さんの技術によって、作品の出来が大きく変わります。
金属での仕上げが終わり、いよいよ色付けとなります。着色専門の職人さんとの共同作業が始まります。職人さんの技術とセンスが最も求められる所です。
この作品には茶色系の色を付けようと考えたので、おはぐろという高岡の伝統的な色付け法を採用する事にしました。まず全体をワイヤーブラシでこすり、硫酸銅を溶かした液体で煮込みます。表面に付いた不純物を取り去り、下地が出来ます。
下地が出来た作品に、スコッチブラシで調子を取ります。
バーナーで熱くなったブロンズに、おはぐろ液を焼き付けています。おはぐろ液と言うのは、米酢に錆びた鉄クズを入れ一年以上寝かしたものをいいます。職人さん秘伝の液体です。
おはぐろ液を塗る刷毛は、藁の芯を束ねて作った特殊なもので、独特のねばりとしなやかさがあります。バーナーであぶり調子を見ながら色を塗り重ねてゆき、やっと思っていた色目に出来上がりこれで作品の完成です。 
完成した作品がアトリエに帰ってきました。この作品に「ぼく」というタイトルを付けました。